前回は、著名な社会学者・山田昌弘氏の書を参考にして、以下の記事を投稿しました。
⇒ 結婚不要社会の実態と可能性|山田昌弘氏の結婚論と少子化対策から考える – 結婚家族.com
結婚・出産が避けられ、少子化対策の効果もない社会。
これを「結婚不要社会」として論じた書を参考にしたものでした。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)調査から
今回の記事は、一面的には、それに通じる状況を、公的なデータで証明するものといえます。
それは、国立社会保障・人口問題研究所が5年に1度実施している「出生動向基本調査」別名「結婚と出産に関する全国調査」。
その最新の2021年実施調査を参考にして、日本の結婚事情について考えてみます。
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結婚のきっかけが変わる|第 16 回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)から
出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)とは|目的と構成
この調査は、日本における結婚、出産、子育て等の現状と課題を調べるために、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が定期的に実施している全国標本調査です。
戦前1940年の第1回調査以来、戦後ほぼ5年毎に実施。この調査は、2021年実施の第16回目のものです。
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)は、日本の社会保障と人口問題に関する調査研究を行う、国内唯一の総合的な厚生労働省の附属研究機関。
人口動態、社会保障制度、家族・世帯、労働、健康、高齢化など、幅広い分野の研究を実施。研究成果は、政府の政策立案や国民の福祉向上に役立てられています。
※国立社会保障・人口問題研究所ウェブサイト: https://www.ipss.go.jp/
出生動向基本調査の目的
同調査の目的については、ちょっと横着をして、社人研の資料を転載させてもらいました。
なお、以降の内容は、同調査報告書を参考に、一部修正を加えています。
またグラフなど資料も、調査から転載しました。
⇒ 現代日本の結婚と出産-第16回出生動向基本調査(独身者調査ならびに夫婦調査)報告書

「出生動向基本調査」実施要領
この調査は、どのように実施されたか。以下の要領で行われました。
1)調査対象
・「令和3年国民生活基礎調査」で設定された調査区から無作為に選ばれた全国1,000調査
・調査区に居住する18歳以上55歳未満の独身者と妻の年齢が55歳未満の夫婦(回答者は妻)
2)調査時期:令和3(2021)年6月(6月30日現在の事実)
3)調査数:
・独身者調査:配布調査票14,011票 有効票数7,826票(有効回収率55.9%)
・夫婦調査:配布調査票9,401票 有効票数6,834票(有効回収率72.7%)
「出生動向基本調査報告」の構成
同調査結果の報告書は、現代日本の結婚と出産-第16回出生動向基本調査(独身者調査ならびに夫婦調査)報告書で確認できます。
大きな3区分とその区分ごとの構成は、次のとおりです。
第Ⅰ部 独身者調査
1 結婚についての考え方
2 交際経験
3 希望するライフコース像
4 未婚者の生活スタイル
第Ⅱ部 夫婦調査
1 夫婦の結婚過程
2 夫婦の出生力
3 子ども数についての考え方
4 妊娠・出産をめぐる状況
5 子育ての状況
第Ⅲ部 未婚者と夫婦の就業・居住・価値観に関する調査
1 就業状況と親との居住
2 子どもとのふれあい経験・周囲の結婚への評価
3 結婚・家族に関する意識
今回は、上記の第2部の最初のテーマ、<夫婦の結婚過程>に関する調査結果を見ることにします。

夫婦の結婚過程|結婚に繋がる出会い、きっかけとプロセス(「夫婦調査結果」から)
それでは、夫婦の結婚過程において、「知り合った」状況や、諸条件についての分析結果を見てみましょう。
報告に準じて、事務的に、簡潔に記していきます。
配偶者と知り合った年齢・初婚年齢・交際期間(過去5年間の初婚どうし婚)
・平均知り合い年齢は男性26.4歳、女性24.9歳。これまで上昇基調にあったが、今回調査では前回調査とほぼ変わらない水準。
・平均交際期間は伸長はみられず、4.3年で横ばい。
・初婚年齢:
見合い結婚の場合夫35.2歳、妻33.2歳 恋愛結婚の場合夫30.2歳、妻28.6歳 全数平均、夫30.7歳、妻29.1歳
・結婚形態別推移
「ネットで」における知り合い年齢は夫27.8歳、妻26.2歳、「恋愛結婚」(夫25.3歳、妻23.8歳)よりやや高め。
平均交際期間は2.8年で「恋愛結婚」(4.9年)よりも短い。

配偶者と知り合ったきっかけ|新たな選択肢「ネットで」知り合い
<夫と妻が知り合う機会は、SNS、アプリ等の「ネットで」が増加し、従来型の「恋愛結婚」
割合が低下>
夫と妻が知り合ったきっかけについて、今回調査から、従来からの「見合い結婚」「恋愛結婚」分類に、新たに「ネット(インターネット)で」という新たな選択肢を加えた。
※ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)やマッチングアプリなど個人間の交流の場をオンラインで提供するサービスを用いて知り合ったケース。従来の選択肢にあてはまらない場合に回答した結果である。
「知り合ったきっかけ」の選択肢リスト
きっかけの分類は以下。この中から選ぶ。
・職場や仕事で
・友人・兄弟姉妹を通じて
・学校で
・街なかや旅先で
・サークル・クラブ・習いごとで
・アルバイトで
・幼なじみ・隣人
・見合い結婚
・メディアを通じて
・ネットで(今回2021年調査で初登場!)
・その他
知り合ったきっかけ:結婚年別構成の変化
2015年以降、下図のように「ネットで」知り合った夫婦の割合が急増しており、最新年では「見合い結婚」を上回った。
「ネットで」は15.1%、「見合い結婚」は9.8%。
新たな知り合いの機会が登場したことで、従来型の「恋愛結婚」の割合が低下した。

知り合ったきっかけ、直近3年間の構成(~2021年・新型コロナウイルス感染拡大期含)
調査回別に夫と妻が知り合ったきっかけの構成
上位を占めてきた「職場や仕事で」の割合
前回調査は28.2%。2018年7月~2021年6月の結婚(2021年b)で21.4%に減少。(新型コロナ感染拡大下の結婚減時期を含む。)
その結果、「見合い結婚」の割合は前回の6.4%から2021年bで9.0%へと増加。
今回調査で追加の「ネットで」(SNS、アプリ等を用いたもの)割合
2015年7月~2018年6月の結婚(2021年a)は6.0%、2021年bでは13.6%。
※ 「人口動態統計」(厚労省)による、2020年の妻の年齢50歳未満の初婚数。
2019年の38万件から33万件へと大きく減少。図表の2021年bの値は、例年より婚姻発生が少ない状況下でのもの。構成割合の上昇は必ずしも発生の増加を意味しない。

夫妻が知り合ったきっかけ:妻の初婚年齢別構成割合
初婚年齢に関わらず「ネットで」知り合った夫婦の割合。2015年7月~2021年6月6年間に大幅増加。
30~34歳では「職場や仕事で」の割合が激減。
「友人・兄弟姉妹を通じて」が大きく上昇。2018年7月~2021年6月3年間では34.7%。
妻の初婚年齢30代以上夫婦。「見合い結婚」が一定割合を占め、最新3年間で、30~34歳で13.3%、35歳以上で26.9%。

最新3年間(~2021年6月)の結婚:知り合ったきっかけの構成割合
2021年までの最新3年間に結婚した夫婦についての調査結果:
知り合った時の妻の年齢別にみると、
・25歳未満では「学校で」24.9%で最多。25~34歳で「友人・兄弟姉妹を通じて」35%前後で最多。
・35歳以上では、「見合いで」「結婚相談所で」を含む「見合い結婚」が4割。
知り合い時の年齢が高いほど見合いの場で出会う夫婦が多い。

再婚者(一方または双方)夫婦の知り合うきっかけ
<再婚者を含む夫婦では「職場や仕事で」知り合う夫婦がもっとも多く、近年は「ネットで」
の出会いも増加>
夫妻双方または夫妻どちらかが再婚の夫婦の知り合いのきっかけでは、
・「仕事や職場で」が初婚どうしの夫婦よりも多い傾向。
・「友人・兄弟姉妹を通じて」が二番目に多い。
この二つの経路で約6割を占めた。
・「ネットで」は、第16回調査では13.9%と三番目に多かった。

結婚を決めたきっかけ:妻の初婚年齢別(結婚持続期間5年未満の夫婦)
・妻が25歳未満で結婚した夫婦では「子どもができた」が今回調査で33.8%と最多。前々回調査50.0%から大きく低下。
・25歳以上では「年齢的に適当な時期だと感じた」が6~7割占め最多。前々回調査より構成割合が上昇。
・30歳以上では「できるだけ早く子どもがほしかった」の選択割合が増加。
・35歳以上ではそれに加え「子どもができた」の選択割合が前々回調査から増加。
下のグラフにあるように、どの年齢帯においても最も高い割合は、「年齢的に適当な時期」という点。
次いで、「できるだけ早く暮らしたかった」。
25歳未満の「できちゃった結婚」だけが象徴的です。
結婚を決めたきっかけ、選択肢リスト
資料では、読みにくいので、以下にリスト化しました。
・結婚資金が用意できた
・収入や住居など結婚生活のための経済的基盤ができた(4位)
・自分または相手の仕事の事情(6位)
・できるだけ早く一緒に暮らしたかった(2位)
・年齢的に適当な時期だと感じた(1位)
・できるだけ早く子どもがほしかった(3位)
・子どもができた(5位)
・友人や同年代の人たちの結婚
・親や周囲のすすめ
・その他
順位は、年齢帯ごとに違いますが、ここでは、全体を一見して受けた感覚で付けました。

Geminiによる「夫婦の結婚過程」調査内容要約
生成AIのGeminiに、第Ⅱ部 夫婦調査結果「夫婦の結婚過程」の内容の要約を頼むと、以下のように報告がありました。
出会いから結婚までの過程
出会いのきっかけ:
・職場や学校で出会う割合が依然として高いものの、減少傾向にあります。
・一方で、友人・知人からの紹介や、インターネットを通じた出会いが増加傾向にあります。
・特に、マッチングアプリなどのインターネットサービスを通じた出会いは、近年増加が著しいです。
交際期間:
・夫婦の平均交際期間は、近年長期化する傾向にあります。
・晩婚化が進んでいることや、結婚に対する価値観の変化などが背景にあると考えられます。
結婚の決め手:
・「子どもができた」ことをきっかけに結婚を決める夫婦の割合は、以前に比べて減少傾向にあります。
・「お互いを深く理解し、信頼できると感じた」など、精神的なつながりを重視する夫婦が増えています。
結婚に対する意識
結婚の意義:
・「愛情を確かめ合うため」「一緒に生活するため」といった、パートナーシップを重視する考え方が主流です。
・「子どもを産み育てるため」という考え方も依然として重要ですが、以前に比べて割合は減少しています。
結婚への不安:
・経済的な不安や、自由な時間が減るのではないかといった不安を感じる人が多いようです。
・特に女性は、仕事と家庭の両立に対する不安を感じる傾向が強いです。
その他の特徴
・晩婚化: 結婚年齢は年々上昇しており、晩婚化が進行しています。
・未婚化: 生涯未婚率も上昇傾向にあり、結婚しない人が増えています。
・多様な結婚の形: 事実婚や同性婚など、従来の結婚にとらわれない多様な形が増えています。
調査結果の背景
これらの調査結果は、社会の変化や人々の価値観の多様化を反映しています。晩婚化や未婚化の背景には、経済状況の不安定さや、女性の社会進出、個人の自由を尊重する価値観の広がりなど、様々な要因が考えられます。
今後の展望
少子化対策のためには、結婚や出産を希望する人が安心して家庭を築けるような社会環境の整備が重要です。経済的な支援だけでなく、仕事と家庭の両立支援、子育てしやすい環境づくりなどが求められます。
随分丁寧に要約してくれました。
但し、数字は一切用いず、傾向と特徴を文章で分かりやすく整理しています。
公的調査の要約なので、数字を少しは用いた要約部分もあればと思いますが、総括的・包括的に、この調査結果が示している問題が提示されているのは、マスメディア的ですね。

2026年調査が待たれる「ネットで出会い、ネット婚」の動向と増加度
今回の調査結果紹介の目的は、結婚への道のりのスタート地点、二人の出会いと結婚という意志決定・行動の決め手について、現状を知ること。
これからの結婚の在り方を考え、提案を行うにあたって、この社人研調査を一つの「きっかけ」にしていこうと考えています。
その考察の大きな要素となるのが、今回の夫婦調査結果で確認できた、「ネットで」という結婚行動要因の今後の変化。
結婚に結びつく出会いの「きっかけ」として、「ネットで」が大きなうねりとなっていくことへの関心です。
競争激化の婚活サービス業界の動向は?
少子化・人口減少社会を背景に、婚活サービス業界における競争がますます激しくなっていきます。
超高齢化社会の急速な進行で、葬儀サービス業界の競争の激化とはまったく反対のマーケット状況にある、婚活サービス業界。
その動向にも関心を持っています。
『結婚の社会学』と考える、近未来の結婚|ネット婚が当たり前の時代に
もう一つ、結婚に関する考察・提案を進めていくうえで参考にしたい書があります。昨年2024年4月に発刊された阪井裕一郎氏著『結婚の社会学』(ちくま新書)。
これも随時活用し、一部紹介しながら、現在とこれからの結婚について考え、提案していきます。
地縁から職縁へ、そして恋愛結婚へと移行・変化してきたこれまでの結婚。これが、「マッチングアプリ時代」の結婚へ、と同書では論じています。
いわば、「ネット婚」社会、「ネット婚」時代へのプロセスですね。
そして、他の多様な社会的状況の変化を受けて、「結婚の未来」を最終章のテーマとしています。
今回の記事とズバリ、マッチングしています。
当サイトでテーマとする「未来の結婚」
私がこれから考えていきたい「未来の結婚」は、2050年の日本社会における結婚の形。
そこに至るまでに、結婚はどのような変化を見せていくか。
そのプロセスと行き着く先は、もちろん、現役世代と次世代が創り上げていくことになります。
当サイトが、どのような役割・機能を持つことができるか。
シニア世代の余計なお世話にならないよう心掛けて、進めていきます。

前回の記事は、こちらで確認できます。
⇒ 結婚不要社会の実態と可能性|山田昌弘氏の結婚論と少子化対策から考える – 結婚家族.com
次回記事は、こちらです。
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