新しい家族経済学への期待|日経「やさしい経済学|変わる家族のありかた」シリーズからー1
日経が連載している【やさしい経済学】で、2025年6月19日から7月1日まで、以下のテーマで9回連載がありました。
同小論シリーズは、家族の経済学、労働経済学、公共経済学が専門の古村聖(こむら・みづき)関西学院大学准教授に拠るものです。
1.変わる家族のあり方(1)加速する家族規模の縮小 – 日本経済新聞 (2025/6/19)
2.変わる家族のあり方(2)「世帯」から「個人」に焦点 – 日本経済新聞 (2025/6/20)
3.変わる家族のあり方(3)性別役割分業の衰退 – 日本経済新聞 (2025/6/23)
4.変わる家族のあり方(4)市場や国家による役割の代替 – 日本経済新聞 (2025/6/24)
5.変わる家族のあり方(5)子どもが持つ経済的な側面 – 日本経済新聞 (2025/6/25)
6.変わる家族のあり方(6)子どもを巡る夫婦の意識のズレ – 日本経済新聞 (2025/6/26)
7.変わる家族のあり方(7)弱まる家族機能と親の介護 – 日本経済新聞 (2025/6/27)
8.変わる家族のあり方(8)増える単身世帯を待つリスク – 日本経済新聞 (2025/6/30)
9.変わる家族のあり方(9)政策設計への示唆と課題 – 日本経済新聞 (2025/7/1)
本記事には、広告が設置されることがあります。
はじめに
家族問題を経済学と結びつけて考えることを、私はあまり好みません。
その最大の理由は、結婚する・したいと思うこと、結婚して子どもを持つ持たないを考えること、どちらも、決して経済学と結びつけて判断し、行動するものではないから。
結果的に、経済に関連するという面は間違いなくあります。
経済を家計を視点にして論じるのはその典型です。
また、個人と家庭の経済的状況が、結婚や子どもをつくるつくらないの判断の重要な理由には、確かになります。
しかし、それらは経済学者のために研究課題を提供することが目的ではありません。
あくまでも経済学からの研究アプローチは、個人個人や個々の家族の行動結果を反映させたもの。
学者が提案する結婚推奨策や少子化対策が功を奏したことなど、一度もないのです。
悪化したことを後理屈を付けて分析し、批判することが常套手段。
EBPM主義の彼らの研究や提案は、官僚や大臣のものと同様に、何の責任を持つものではありません。有識者あるいは専門家という領域にある人の情報公開に過ぎません。
そういう基本認識を持つ私ですが、つど関連するアプデートされた諸情報を利用して、その内容と評価はやっていこう、という人の悪い作業を、継続していきます。
今回の日経の「変わる家族のあり方」もそうした基本認識を基に、9回シリーズを1記事で2テーマごとを取り上げて、考えるところを、経済学の枠も時に外しながらメモしていきます。

【変わる家族のあり方(1)加速する家族規模の縮小】から
それでは、小論シリーズの序章とも言うべき、第1回目の以下の記事の論述を見ていくことにします。
⇒ 変わる家族のあり方(1)加速する家族規模の縮小 – 日本経済新聞 (2025/6/19)
注目される家族や家計の構造変化|社会・経済制度が求められる課題と対応とは
「近年、あらためて家族や家計のあり方が注目されている。拡大家族や核家族といった伝統的な家族モデルは崩れつつあり、家族・家計の構造にも大きな変化が生じている。こうした変化に伴い、どのような課題が生じ、社会・経済制度はどのような対応を求められているのか。」
こうした問題意識をベースにした本小論です。
2つの生成AI、ChatGPTとGeminiに要約を依頼し、その回答を用いながら進めていきます。
ChatGPTによる「加速する家族規模の縮小」要約
1)家族規模の縮小という長期トレンド
戦後日本では、家族の平均世帯人数が5人(1953年)から2.23人(2023年)へと大きく減少。今後さらに2人を下回ると予測されており、家族規模の縮小が明確な傾向として続いている。
2)家族構成の変化:拡大家族から単身世帯へ
かつて主流だった3世代の拡大家族は高度経済成長期に核家族へと移行。1980年前後に核家族がピークを迎えた後は、単身世帯が急増。現在では高齢の単身者が多くを占める。
3)単身化を進める社会的要因
晩婚化・未婚化、少子化、離婚・死別の増加といった要因が家族の小規模化を後押ししている。加えて、再婚家庭や同性カップルなど、多様な家族形態も登場している。
4)連載のテーマと視点
この連載では、家族の構造変化を経済学的視点から読み解き、特に「結婚(世代内)」と「親子(世代間)」という2つの関係がどのように縮小してきたかを考察する。
Geminiによる「加速する家族規模の縮小」要約
1)家族規模の縮小とその背景
日本の家族は、戦後から一貫してその規模が縮小しており、1953年の平均世帯人数5人から2023年には2.23人まで減少しました。
これは、拡大家族から核家族化へ、そして単身世帯の急増へと変化した家族構成が要因です。特に、高齢単身者や未婚の子どもと親の同居が増加しています。未婚化・晩婚化、少子化、離婚、死別がこの傾向を加速させています。
2)多様な家族形態の出現
伝統的な家族モデルが変化する中で、再婚家庭、同性カップル、血縁にこだわらない多様な家族形態も登場しています。本連載では、結婚(世代内の関係)と親子(世代間の関係)の縮小を経済学の視点から分析します。
近年、あらためて家族や家計のあり方が注目されています。拡大家族や核家族といった伝統的な家族モデルは崩れつつあり、家族・家計の構造にも大きな変化が生じています。こうした変化に伴い、どのような課題が生じ、社会・経済制度はどのような対応を求められているのでしょうか。
本稿投稿者による「加速する家族規模の縮小」要約とまとめ
家族規模縮小の要因としては、
1)未婚化・晩婚化
2)子どもの数の減少
3)離婚や死別
などが挙げられるのは、既定のこと。
これに、近年の傾向としての
1)再婚家庭
2)同性カップル
3)血縁にこだわらない
等、多様な家族形態の選択傾向を加えています。
この間には、8050問題と話題になった「未婚の子どもと親が同居する世帯」や超高齢化社会の進展とも重なり合う「高齢単身世帯」の急増も、同列に加えられるべき要因と言えるでしょう。
こうした傾向・トレンドは、再確認事項です。
裏切られる、人口・家族問題公的専門機関の推計
しかし、その中でも注目すべきは、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、平均世帯人数が、2033年には2人を下回ると予測されています。
2024年の「人口動態統計」結果を見れば明らかですが、合計特殊出生率や世帯人員数、人口減少数などは、当初推計値を大きく下回り続けているのです。
人口問題は家族問題、結婚問題と直結しているものですが、国の最高の専門機関の推計をもっても、現実は、10年も20年も速く低位で進行しているのです。
(参考)人口統計資料集(2024年版)|国立社会保障・人口問題研究所
専門家とマスメディアで繰り返される議論と再認識作業、再分析作業
いわゆる「核家族化」は、「少子化」「高齢化」と併せて、家族社会学分野において軸となる課題です。
そして、どの課題も、30年以上前から認識され、一応それらしく、その折々に議論され、政策提案もされてきたはずでした。
そして、今、現在も、こうして日経が「やさしい経済学」の1ジャンルとして、「家族」問題を、易しく?読み聞かせてくれるというものです。
その景色は、相も変わらず、のことです。

【変わる家族のあり方(2)「世帯」から「個人」に】から
世帯人数の低下に伴い、家族問題の焦点は「世帯」から「個人」へ
では、次の小論
変わる家族のあり方(2)「世帯」から「個人」に焦点 – 日本経済新聞
に進みましょう。
最初の小論に続き、同様、ChatGPTとGeminiによる要約を以下に転記しました。
ChatGPTによる「「世帯」から「個人」に」要約
1)経済学による家族分析の始まり
1960年代以降、ゲーリー・ベッカーの理論を軸に、家族の経済活動(出生、教育、時間配分、労働・家事分担)と社会制度との関連性が理論的に検証され始めた。
2)家族を構成する「個人」への注目
1970〜80年代、女性の社会進出などにより、家族を一つの単位とする従来のモデルに批判が起こり、家族内の各構成員を独立した意思決定主体とみなす見方が広がった。
3)ゲーム理論の応用と家族の意思決定
経済主体間の相互作用を分析するゲーム理論が発展し、夫婦や親子間など家族内部の意思決定の分析にも応用されるようになった。
4)家族経済学の理論進化と実証研究
理論の進化とともに詳細な家計データの活用が進み、複数の個人による意思決定モデルが支持されるように。これは社会保障や政策の見直しに新たな視点をもたらした。
Geminiによる「「世帯」から「個人」に」要約
1)初期の家族経済学と「世帯」中心のアプローチ
家族経済学は1960年代にゲーリー・ベッカー氏を中心に本格化し、家族の営みを市場や社会との関連で分析しました。
当初は家計を最小単位とし、出生行動と経済成長・社会保障制度の関係、家族内の時間配分や家事分担、教育投資の社会生産性向上への影響などが研究されました。
2)「個人」への焦点のシフトと新たな理論の台頭
1970年代から80年代にかけて、特に米国の女性の社会進出に伴い、家族を構成する一人ひとりが独立した経済主体として意思決定を行うという視点が強まり、これまでの家計を「ブラックボックス化」するモデルへの批判が高まりました。
この時期のゲーム理論の発展が、家族内の意思決定(親子、夫婦など)への応用を可能にし、「家族の個人化」という社会的潮流と理論の発展が相まって、新たな家族経済学のフレームワークが確立されました。
詳細な家計データの利用と統計分析の進展により、複数の個人が意思決定を行うとする理論が支持され、家族に関する政策設計や社会保障制度の見直しを促す契機となりました。
本稿投稿者による「「世帯」から「個人」に」要約とまとめ
この小論では、主に、家族経済学における分析やアプローチの歴史・変遷に焦点が当てられています。
家族問題の焦点が「世帯」から「個人」に移行した。
というよりも「世帯中心」家族経済学から「個人中心」経済学への焦点の移行の歴史と変遷が主テーマと読み替えるべき。
そう感じたのですが・・・。
社会の変化が先か、経済社会学の変化が先か
社会と時代の変化に合わせて、経済学のあり方も変化していくのは、当然と言えるでしょう。
個人と家族・家庭のあり方の変化が先行してきたわけで、経済学がその先導役を務めたわけでは絶対にありません。
言いかたを変えるなら、社会の変化が、経済学の変化を招いた。
いや、変化せざるを得なかったというべきかもしれません。
1960年代の同学会をリードしノーベル経済学賞受賞の米国・ゲーリー・ベッカー氏も、次世代の研究者からは批判され、家族経済学自体の変化がもたらされました。
彼の研究時において、次年代に将来する状況・動向が、自身の研究分析から予見・予測されたということはなかったのです。
では、「家族の個人化」で確立されたという新たな家族経済学のフレームワーク。
そこでの家計データの利用と統計分析の進展という成果により、家族に関する政策設計や社会保障制度の見直しを促す契機となったと。
現代の家族政策設計や社会保障制度改定の契機となった家族経済学。
果たしてそれが、どれほどまでの成果・効果を上げ、問題のない社会を出現・構築させたてきたか?現在の家族をめぐる諸問題の解消に真に貢献できたのか?
やはり、総合的な社会的な結果の集計・集約の分析手法の提示・提供にとどまり、後理屈を付けただけではないのか?
あるいは、バランスとやらを重視し、総論・総花的な、注釈付きの制度改訂提案に過ぎなかったのではないか?
若手経済学者に期待したい、先行学者・専門家との違い
今回の小論を担当した若手研究者・経済学者である古村聖氏は、これからどのような行動で、家族経済学に関わっていくのでしょうかか。
従来の専門家とは異なるものを期待したいと心から願いたいものです。
なお、前出のシリーズ初回の小論の最後には、こう記されています。
「この連載では経済学の立場から、特に結婚という世代内の関係と、親子という世代間の関係がどのように縮小してきたのかを読み解いていく。」
結婚問題と家族問題は、当サイト「結婚家族.com」の主領域のテーマ。
現状認識入門編・入門論としての小論シリーズなので、大きな期待は持っていませんが、今後、これまでの家族社会学者や、家族経済者とは違う論述に出会う機会があることを期待しています。
柴田悠氏や山口慎太郎氏は、期待外れの感が強かったので。
(参考)
⇒ 「子育て支援は日本を救う」の真意を問う|柴田悠氏2書から読み解く少子化と財政問題 – 結婚家族.com
⇒ 「少子化対策の盲点」論をどう読むか|日経3回シリーズと柴田悠氏論考の比較と批判 – 結婚家族.com
では、続く小論にも注目していきましょう。
次回は、家族規模に影響しうる要因をテーマとした、3回目と4回目の以下の小論記事を対象として考えます。
3.変わる家族のあり方(3)性別役割分業の衰退 – 日本経済新聞
4.変わる家族のあり方(4)市場や国家による役割の代替 – 日本経済新聞
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