家族規模縮小社会は、高齢単身世帯急増社会|日経「やさしい経済学:変わる家族のありかた」シリーズからー4
古村聖(みづき)関西学院大学准教授による、日経【やさしい経済学】欄「変わる家族のあり方」小論シリーズ。
9回シリーズのこの小論をテーマに、ここまで以下の記事を投稿しました。
第1回:変わる家族のかたちと経済学の視点|家族規模の縮小と「個人化」する家族関係を読み解く – 結婚家族.com
第2回:家族規模縮小の本質とは?「性別役割分業の衰退」と「家族機能の外部化」論への異議 – 結婚家族.com
第3回:少子化を巡る経済学の「ムリ筋」:子どもの便益・費用論と家族の変容を問う – 結婚家族.com
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超高齢社会で加速する家族規模縮小:親の介護と高齢単身世帯の急増が示す社会課題【日経『変わる家族のあり方』考察・第4弾】
はじめに|本記事の主旨:現代社会が直面する「家族の変容」を読み解く
日経「やさしい経済学」シリーズ『変わる家族のあり方』の連載を読み解く第4弾です。
これまでの連載記事では、家族の平均世帯人数の減少や、家族問題の焦点が「世帯」から「個人」へと移り変わる経済学の視点に注目してきました。
特に前回は、子どもを持つことの「便益」と「費用」という経済的な視点、そして夫婦間の意識のズレといった論点が、現代の少子化や家族のあり方を語る上でいかに「ムリ筋」であるかを考察しました。
当サイトでは、経済学が提示する仮説の背後にある「人間」としての側面や、社会の現実とのギャップについて、独自の視点から問いを投げかけています。
今回は、連載の以下の7回目と8回目にあたる小論をテーマに、さらに深く、家族の変容、特に「親の介護」と「単身世帯の増加」がもたらす社会的なリスクに焦点を当てます。
親の介護を巡る「きょうだい間の調整問題」や、単身世帯が直面する「家族の保険機能の喪失」といった経済学的な分析は、現代社会の課題をどこまで正確に描き出しているでしょうか?
7.変わる家族のあり方(7)弱まる家族機能と親の介護 – 日本経済新聞 (2025/6/27)
8.変わる家族のあり方(8)増える単身世帯を待つリスク – 日本経済新聞 (2025/6/30)
高齢化が急速に進む日本社会において、家族の機能が変化し、単身者が増えることは避けられない現実です。
これらの小論が提示する経済学的仮説に対し、私たちはどのような疑問を抱き、どのような視点から考察を深めるべきなのか。
その本質を探っていきたいと思います。
では順に見ていきます。
変わる家族のあり方(7)弱まる家族機能と親の介護 – 日本経済新聞 から。
【変わる家族のあり方(7)弱まる家族機能と親の介護】から
「年老いた親と子どもの関係から、世帯規模の縮小について考える」という本小論。
ここでは、親の介護という側面から世帯規模の縮小、そして家族機能の変化を経済学的に考察しています。
これまで同様、同小論を、生成AI、Geminiに要約してもらいました。
Geminiによる「弱まる家族機能と親の介護」要約
1)介護の担い手の変化と子どもへの期待減退
かつて親の介護は、時間的・金銭的費用が比較的低かった娘や息子の妻が担うことが多かったと指摘。
しかし、女性の社会進出が進み、さらに老後に備えた市場(介護サービスなど)や社会保障制度が発展したことで、子どもに介護を期待する傾向が薄れていると述べられています。
2)子どもの数と親との同居率の逆説
伝統的な経済学が家族を単一の意思決定主体と見なすのに対し、新しい家族経済学では「個人」に焦点を当てることで別の視点が得られるとします。
小論では、子どもの数が多くても親との同居率は必ずしも高くならないことを指摘。
むしろ、兄弟姉妹の存在が親との同居の可能性を低下させ、結果的に家族規模の縮小につながるという研究結果が紹介されています。
3)親の介護における「公共財の自発的供給」問題
親の介護を巡る兄弟姉妹間のやり取りは、経済学の「公共財の自発的供給」問題に似た構造を持つと説明されています。
誰かが親の面倒を見ることは、他の兄弟姉妹にとってもメリット(公共財)ですが、それぞれがその費用や労力を負担したいとは限らないため、家族全体にとって望ましい介護水準に達しない可能性があると指摘。
欧米のデータ分析でもこの現象が確認されていると具体例が挙げられています(丸山士行教授の米国研究、ベルジョ・ジュリアン氏のフランス研究)。
4)政策設計への示唆
かつて理想とされた「親の世話を子どもが担う」という家族像が、家族機能が弱まっている現代においては現実的ではないとし、過去と同様に家族に依存する前提での政策設計には慎重であるべきだと結論づけています。
「家族機能の弱まり」と親の介護問題:経済学の視点とその限界
ここまで、当小論シリーズの骨格が、家族規模の縮小にあることを見てきました。
規模の縮小に合わせて、当然、従来持っていた家族の機能も縮小することが予想されます。
その端的な例が、親の介護問題と言えるでしょう。
私自身も、10年近く前に生じた義母の介護体験から、非常に関心を持っている介護と終活問題。
さて家族経済学視点では、どのように扱ったでしょうか。
(参考)
⇒ 93歳義母「サ高住」介護体験記|2015年の記録と気づき – 介護終活.com
⇒ 98歳義母「特養」介護体験記|コロナ禍の特養介護生活と2介護施設での費用を11記事で回想 – 介護終活.com
⇒ 100歳義母 看取りと見送りの記録|終活を実践した家族の体験全10話(2022年7月〜10月) – 介護終活.com
「公共財としての介護」論の曖昧さ:家族介護の現実を見落とす経済学
家族の誰かが親の介護を担うことを「公共財の自発的供給」と定義化。
なぜそれが公共財なのか説明不足ですし、そこでの介護水準が家族全体にとって望ましいものにはならないことがある、と。
介護の家族負担から、外部サービス化が進んだことをもって介護サービスが「公共財」とされたということなのか。
そうならば、自発的供給という用語の意味が、国と行政が、家族介護・在宅介護を奨励する介護政策と矛盾する側面があります。
そもそも、家族全体が望む介護水準とはどういうモノ、レベルなのか。それはどうすれば実現されるのか。
基準を示すことが難しく、個々の事情によって変わるモノ、コトでしょう。
この現象が、欧米のデータ分析で確認されている具体例が挙げられているともいうが、それがどの程度の比率・確率でのモノか、コトかも非常に曖昧です。1件でもあればそうということなのか。
揺れる「自宅介護」の希望:子どもへの期待と介護保険制度・政策のギャップ
老後に備えた介護サービス市場や社会保障制度の発展で、子どもへの介護の期待は薄れている、と。
子どもの世帯分離と別居がそれもやむなしとしている面があるとしても、一方で、施設介護よりも、自宅介護・在宅介護を希望する高齢者が多いという相反する現実があります。
こうした点への踏み込みがありません。
なぜ語られないのか?介護離職がもたらす経済的損失という盲点
家族経済学を主眼とするならば、実は、介護離職問題には絶対に触れるべきです。
介護離職による経済的損失をめぐる問題・論述は、これまでも強く喧伝されてきましたし、現在もその重要性は、ことあるごとに話題になっています。
ですが、本論では触れずじまい。解せない、大きな疑問です。
家族規模縮小がもたらす介護問題の本質とは
7回目の小論にして初めて、取りあげた問題の政策決定のあり方について、簡単に示唆する箇所が出てきました。
家族機能が弱まり縮小している現代において「親の世話を子どもが担う」という家族像は非現実的。
だから、過去と同様に家族に依存する前提での政策設計には慎重であるべき、と。
では具体的、現実的な政策はどのようなモノか。
次回最終小論で、経済学的な視点から提示されるのでしょうか。

次に、変わる家族のあり方(8)増える単身世帯を待つリスク です。
【変わる家族のあり方(8)増える単身世帯を待つリスク】から
同じように、当小論を、Geminiに要約してもらいました。
Geminiによる「増える単身世帯を待つリスク」要約
この小論では、増加傾向にある単身世帯に焦点を当て、その増加が社会にとってなぜ問題なのか「家族の保険機能」という経済学的な観点から分析しています。
1)家族の持つ「経済的な保険機能」
経済学において、家族は経済的な保険機能を持つと考えられます。
例えば、夫婦の一方が失業や病気になっても、もう一方が家計を支えることができ、親子同居の場合も相互扶助の関係が成立します。
2)単身世帯が直面するリスク
単身世帯は、こうした家族の保険機能にアクセスできず、経済的ショックへの備えが難しいと指摘。
特に高齢単身世帯の増加は、家族からのサポートが得にくい状態で、貧困リスクや介護・疾病リスクに直面することを意味すると述べられています。
3)家族規模縮小が連鎖的に生むリスク
婚姻関係に注目すると、結婚しない人はパートナーからの支援がなく、子どもを持たない場合は子どもからのサポートが期待できません。
さらに、子どもの数が減ると結婚関係への投資が相対的に小さくなり、離婚しやすくなるという見方も提示。
離婚後に高齢期を迎えると、別居している子どもからの支援も受けにくくなるため、家族規模の縮小がさらなる縮小の連鎖を生む可能性が示唆されています。
4)高齢女性の年金問題と人生を通じた格差
高齢単身世帯には女性が多く、出産・育児で働く機会を減らした女性は年金受給額が少ない傾向にあり、離婚の影響も大きいと強調。
年金分割制度導入以前に離婚した女性の所得保障に格差が生じかねないと指摘されています。
小論は、現役世代の男女経済格差だけでなく、人生全体を通して家族の保険機能にどれだけアクセスできるか、そして働き方や家族構成の選択が老後の格差を拡大させる要因となりうることを重視すべきだと結んでいます。
家族の分離・分散化。家族の変容が加速する超高齢社会:高齢単身世帯の急増とそのリスク
ここでの家族規模の縮小には、少子化要因も含みます。
望んで単身生活・単身世帯化する人、望みはしなかったがやむなくそうなった人。
生き方の選択の自由、結婚するしないの自由、子どもを持つ持たないの自由は、自ずと、家族規模の縮小と単身世帯形成を進めます。
そこに団塊世代全員が後期高齢者となった2025年以降加速する超高齢化社会が、追い打ちを掛けます。
「家族の保険機能」喪失の現実:単身者と縮小家族が抱えるリスク
家族機能を自ら手放す例には、離婚も含まれます。
望んでも実現・実行できない結婚や出産も、結果として、家族が持つ保険機能を手放すか、喪失する、あるいは機会損失をすることになります。
やむなく、自然に単身生活者となる場合には、そうした喪失が招く不安や不便に、予め備えておく必要があります。
そのための備え、望ましい「終活」の実践を考えておくことになります。
高齢単身世帯の経済的ショックとリスク:社会の備えと個人の選択
家族という保険を入手できない場合、これからの生活において「経済的な問題」に遭遇するリスクが高くなります。
想定外の場合、あるいは想像していたよりも厳しかった場合、「経済的ショック」と表現しています。
分散している家族であってもそうした保険・保障を確保している。あるいは自分自身でその備えをある程度、あるいは十分行っている。
現実には、なかなかそうした備えを行っている高齢者は、少ないことが予想されます。
いわゆる自己責任論が押し出される領域でもありますが、年金制度を初めとして、介護保険制度や生活保護制度を含む社会保障制度全般の改善・改革の必要性が喧伝されるのも常です。
しかし、改善改革を待つだけでなく、現役世代においては、これからその備えに取り掛かることを真剣に考えることをお薦めします。
高齢者は、今からでも日々の生活のあり方の見直しを踏まえて、少しでも備えを蓄積していける行動が必要でしょう。私自身の課題でもあります。
女性が直面する複合的なリスク:ジェンダー格差と家族機能の変化
本小論の主眼は、家族機能の保険喪失時の女性の不利・リスクを明確化し、対策や政策が不可欠であることを示すことと考えます。
特に性別役割分業が著しく、当然であった時代においては、ある意味無援状態にあったと言えるでしょう。
現代社会においても、その影響を大きく引きずっていますが、歩みは遅いですが、改善の道筋をたどっているといえるでしょう。
一方、女性自身の生き方・働き方の選択権が本人にあるため、ジェンダー云々に拘わらず家族問題に対する考え方や行動選択基準も自身の掌中にある時代となっています。
女性高齢者については、前項迄の記述の領域で考えることとし、現役世代の女性に関しては、こうした認識での選択と行動を期待したいと考えています。
もちろん、格差解消・問題解決のための政策・制度の改革は不可欠なのはいうまでもありません。
後述する各WEBサイトでの課題としています。

「変わる家族のあり方」の最終的課題:多様化・個別化社会への対応
結婚・家族から介護・終活へ:人生の必然としてのライフステージ毎の問題群
家族・結婚問題は、必ず介護・終活問題に直結します。
今回の小論の展開自体がそれを示しています。
本稿は、当サイト結婚家族.com においてのものですが、これとは別に、介護終活.comというWEBサイトも運営しています。
どちらも人の一生において必ず通過し、それぞれの段階で何かしらの問題・課題が生じ、対応を必要とします。
多様なライフステージを支援するWEBサイト群:希望実現への道標
こうしたライフステージにおける様々な個々人の問題や望ましい生き方や働き方、ライフスタイルを考え、提案するWEBサイトとして、Life Stage Navi (ライフステージナビ)も運営しています。このサイトのカテゴリーに、家族、結婚、子育て、介護、終活、高齢生活などを設定し、それぞれのサイトと連携も行っています。
付け加えておきますと、ライフステージナビのスローガンは、”Career & Life Design Step Guide|希望実現のためのアプロード・ナビ”です。今年開設したサイトですので、今後の活動に注目してください。
もう一つ、これらの個々人の多様な課題は、当然個人個人の力で改善・解決するには限界があります。
言うならば「社会」課題、「社会」問題として着目・設定し、社会的な取り組みが必須です。
そのために「望ましい2050年の日本社会の創造」を基本方針としたWEBサイト、Onologue2050も開設しています。
これもまだ始めたばかりで、オリジナル記事の積み上げはこれからという状況ですが、並行して注視して頂ければと思います。
そして究極のWEBサイトとして、ベーシックインカム論サイトを位置付けたいと考えています。
現状ほぼ休止状態にある https://basicpension.jp というサイトは、2023年迄の投稿で占められていますが、見て頂けますので、チェックしてみてください。
今年中には、リモデル版のサイトを立ち上げたいと考えています。
以上紹介したサイトはみな、家族・結婚・子育て、介護・終活・高齢者生活等すべてに関係したテーマを直接・間接に扱うものです。
家族問題解決への提言:経済学と社会学の統合、そして財源論と包摂性
総合性・包摂性の要求は、当然、政策立案にも必要です。
では、私のその限界のある手法からの提案をできるのか。
もちろん、ムリです。
ただ申し上げておくべきは、ここに社会学的なアプローチを統合させて、議論し、分析提案作業を行うべきこと。
また、経済学アプローチにおいては、財政・財源問題も最終的提案・提言時に必ず添えること。
以上です。
但し、社会学者においても、その作業は不十分で、財政・財源問題には踏み込まず、経済学・経済的アプローチ考察においては、どこか他人事風な処理に終わりがちです。
結局、最終的には、政策提案・提言のあり方、内容に行く着くのですが、本小論では、最終回9回目でのテーマとしています。

この9回目の小論と全体の総括を一体とした記事を予定しています。
但し、その前に、もう1回、本稿シリーズがあります。
当初期待をもって始めた9回の小論シリーズをここまで4回に集約して紹介と考察を行ってきました。
残す最終回の記事は以下。
9.変わる家族のあり方(9)政策設計への示唆と課題 – 日本経済新聞 (2025/7/1)
もっとも注目している、種々の家族規模縮小問題にどのように取り組むのか。
次回、その政策化がテーマの最終小論を紹介するとともに、全体の総括も行って締めくくりたいと思います。
なお、当該の日経記事へのリンクを貼っていますが、同紙の電子版は有料読者だけがアクセス可能であることをご了承ください。
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